higolog

肥後が常日頃考えていることをここで表現します。

海外で駐在員として、新規事業立ち上げをしてみた結果【後編】

前回の記事の続きです。

 

higolog.hatenablog.com

 

僕の会社がグループ会社(タイの現法)をもっていたのは大変助かりました。いきなり脱線しますが、海外での新規事業の立ち上げは、海外での会社立ち上げより遥かに楽です。会社立ち上げの場合は、登記手続き、会社規定の決定、従業員の確保、営業、財務、会計と会社に守られていますが仕事量と精神的ストレスは尋常ではありません。雇われ社長(サラリーマン)として会社立ち上げをされた方にお話を聞くと誰もが「もう2度とやりたくない」と言うくらい過酷です。

  

立ち上げ社長に対してのみ、特権としてかなりの給料を会社側は支払うべきです。通常給料の3倍は必要でしょう。 僕の先輩はカンボジアで立ち上げをされました。労働環境(職場、給与、福利厚生)がいい会社には人が集まりますが、大手自動車メーカーには太刀打ちできないので従業員を確保するのに本当に苦労されていました。タイやカンボジアでは無断で2日連続で休むと「あっ、辞めたな」となります(笑)真面目に退職届けを出すパターンは稀ですね。ひどいときの離職率は1ヶ月で20%だったそうです。単純計算ですが半年で全員入れ替わります(笑)従業員の確保に関しては村へ行き、村長と話し会い、村の人達をそのまま雇うことも経験されました。雇ったからには責任をもって彼らを食わしていく必要があります。

 

責任、重圧、日本で当たり前のことが当たり前でない環境。このストレスを解消するのには、やっぱり食事と娯楽になるわけです。男性なら風俗も加わります。日本人にはやっぱり和食が1番合う。高いお金を払ってでも日本食が欲しくなる。食も娯楽も風俗もタイは桁違いに恵まれています。僕がカンボジアの立ち上げを任命されたら、引き受けるかどうか真剣に考えます。大学時代のアメリカでは毎日1人で豆料理を食べていた僕ですが、そんな僕でも迷います(笑)

 

以上のように、グループ会社が現地にある状態での新規事業の立ち上げは会社立ち上げに比べると遥かに楽なのです。そうは言っても新規立ち上げの仕事も楽ではありません。僕の場合、取り扱う製品に関する基盤がほとんどない状態からのスタートとなりました。基盤とは調達先と販売先を指します。調達先に関しては日本からの輸入は可能でした。タイではイニシャルコストが非常に重要です。購買担当者が数年で異動になるケースが多いからです。購買担当者が彼ら自身の評価(彼らの上司・上長からの評価)を上げるには長期コストを下げるより“イニシャルコストを下げる”必要があります。言い換えると、中長期でのコスト試算は役に立たないのです。

 一般的に日本や欧米では資材のコストは中長期で計算されます。繰り返し使うことが前提だからです。土俵に上がるためには、先ずは値段なのです。そんな環境で日本からの輸入品というのはお粗末極まりない。何度も言いますが差別化が出来ている特殊な製品でしたら大丈夫ですし、差別化の出来ていない製品の場合は現地調達(近距離からの輸入)が必至です。

 

日本製品は人件費の兼ね合いからかなり不利です。現地での調達先を確保するために少しずつ出来たネットワークやタウンページ(バンコクにもあります笑)を頼る方法と尾行作戦を駆使しました。尾行作戦とは、似た製品を見かけると、それを使用している会社に問い合わせして聞き出す作戦です。商流の関係(製造元と販売元が異なるケース)で直ぐに製造元にはたどり着けないこともありますが効果は抜群です。タイは日系自動車メーカーの工場が多数あるので、揃わないものはないと言っても過言ではありません。販売先に関しては、前回述べた自作の訪問リストをベースにPDCAをまわします。真面目にPDCAを回すとターゲットの会社が見えてきます。時間さえかければターゲットの会社は突き止めることができます。ここから先が課題なのです。決裁権のある人間にたどり着くのが至難なのです。営業では購買量が多い会社を先ず狙いますが、大きな会社の場合は担当者になかなかたどり着けません。日系の会社は比較的簡単ですが、現地タイの超大手企業は全く攻略出来ませんでした。強力な人脈がないと先ず無理です。仮に物理的に会えたとしても話が前に進みません。タイ人同士のコミュニュティーには部外者である我々は簡単には入れません。現地事情に精通したタイ人が必要なのです。

 

多くの日系企業が現地の会社と合弁会社を作っていることが何よりの証拠です。※基本的にサービス業に関しては外資(タイでは日本が外資です)100%の会社設立は法律的に許可が下りません。タイ人の雇用を守るためです。自社独自で海外の市場で戦うことにトライした日系企業が様々な壁に当たった上での戦略なのです。

 

個人のマンパワーには限界があること、もっと戦略的に営業する必要があること等、大変勉強になりました。 個人の力はもちろん大切です。僕個人が動き回って突破口を見つけるまでにかかる時間に投資するよりも、精通したタイ人を見つけて取り入れる方が効率は遥かにいいと思います。営業で1番ダメなのは△の状態です。売れる可能性が高いのは○、可能性が低いのは✖︎、判断出来ないのが△です。○なら継続して攻めます、✖︎なら見切りをつけて違うことに着手したらいいのです。言い方は悪いですが△はダラダラと時間が立ち費用が膨らみます。

 

僕は✖︎の報告をしました。

 

ターゲット候補の日系企業はほとんど回りました。タイ企業は時間をかけても牙城を崩せない(牙城までたどり着けない)と判断しました。そもそも、僕の取り扱っている製品はタイではほとんど使われていませんでした。つまり市場がなかったのです。市場がない中での営業は啓蒙活動も必要になります。海外市場で奮闘している企業は本当に凄いと思います。自社のグループ会社も該当しますが(笑)実は、現地で採用した日本人やタイ人が本当の意味で現地日系企業を動かしているパターンは少なくありません。駐在員は本社からの定期的な見回り役のように送られる会社は多々あります(笑)会社が海外市場を“本気で”狙うなら、1人だけを現地に送るというやり方はお勧めしません。具体的な指示や判断をするべきの上長の責任の所在が曖昧になるからです。

 

役員クラスの上長を現地に送り込み、彼にかなりの決裁権を与え現地の判断でガンガン進める方法が最適だと考えます。日本側とはテレビ電話で定期的に連絡を取っていましたが、やっぱり直接会って話をすることは必要不可欠です。僕は面と向き合って意思疎通することの大切さ、生の言葉や行動によって士気(モチベーション)を上げることの重要さを再再々認識しました。将来、僕が上の立場になったときにタイでの経験を生かします。